『準備万端 音出しなし』2022年03月29日 11時11分11秒

<落語・小言隠居>

熊:隠居、どうもいけねえ。
隠:おや熊さん、いきなり来て”どうもいけねえ”、とは、とうとう熊さんも年貢の納め時か。
熊:年貢なんざ収めねえが、どうもトロンボーンの調子が良くねえ。
隠:ふーん、もしかして、調子が良くないのは熊さんのほうじゃないのかい、始めにちゃんと、ロングトーンと音階練習はやってるかい。
熊:あんなもん、とうに卒業した。
隠:熊さん、陸上競技の選手がいきなり100mを走ったり、お相撲さんがいきなり土俵に上がって相撲をとるのを見たことがあるかい。
熊:バカだね、そんなことすりゃ、気分が付いていかねえし、だいいち体が壊れちまう。
隠:そこだよ。
熊:どこです。
隠:捜すんじゃない、つまりだ、
ロングトーンは、
・口輪筋(口の周りの丸い筋肉)を少しずつ活性化させる
・呼吸に使う腹筋、横隔膜、胸郭(肺の周りの空洞)のストレッチ
音階練習は、
・音楽に向かう精神の準備
・正確な音程に対する耳の準備
つまり、どちらも、スポーツに大切な準備運動と同じ役割だ。
熊:ふーん、ちょうど落語の”まくら”、みてえなモンだな。
隠:ま、そうとも言えるかな、いきなりバカデカい音を出したり、難しい曲の練習をやるより、まずは何事も、準備万端怠りなし、で始めることだ。
熊:そうかい、じゃ帰ってやってみよう、あばよ。
隠:おいおい、お茶ぐらい飲んでいったらどうだ。
熊:お茶はご遠慮申し上げやしょ、ビールならいいが。
隠:ビール?熊さんは焼酎派じゃなかったのか。
熊:なに、ビールは次に飲む焼酎の、準備運動だ。

そこで本日の一言、
『準備万端 音出しなし』