『いつまでもあると思うな親と現金払い』2023年09月21日 08時25分25秒

<近未来小説・「続・一人フルバンド」>

収録が終わったトロンボーン奏者は、ギャラを受け取りに事務所に向かった、事務所はスタジオの2階にあった。

ドアをノックし、「すみません、今日のバンドマン役の者ですが、ギャラをお願いします」と声をかけた。しかし、中では何かの議論が行われている様子で、彼の声は届いていないようだった。

「どうして、演奏者の再現に、人間が必要だったんだ」
「当時のバンドマンというのは行動にクセがあって、AIにデータがないんです」
「そんなもの、自動作成すればいいじゃないか」
「しかし、ディレクターが、生の人間がいいと言い張ったので」
「そんなディレクター、クビにしてしまえ」
「クビというか、彼もAIで作った合成人間だから、新しく作ります」

「え!AIで作った合成人間!?」会話を立ち聞きしていたトロンボーン奏者は、驚いてドアを開けて部屋の中へ入って、さらに驚いた、「こ、これは!」
中はただの狭い機械室で、コンピュータの光が点滅しているだけだった、その点滅と同期して声が響いた、
「ギャラの支払いは振込です、トッパライではありません」

注)トッパライ=当日現金払い、バンドマンへの旧式なギャラの支払い方法。

そこで本日のひと言、
『いつまでもあると思うな親と現金払い』

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