『モノ言えば 唇寒し MCの風』2023年12月11日 11時11分11秒

<新作落語/いきポカ>

熊:隠居、ちょっと相談があって来たんだが。
隠:おや、熊さん、どうしんだ、額にコブなんかつくって、転んだのか。
熊:そうじゃねえんだ、聞いっくれ、このあいだ老人ホームに慰問演奏に行ったんだが、何が気に食わねえんだか、そこの爺がいきなりポカリ、いきポカだ、隠居に聞きゃ、なにかわかるかと思って。
隠:いきなりポカリ?、なんか変なことを言ったんじゃないか。
熊:何も変なこたぁ言ってねえ、曲の紹介をしただけだ。
隠:ほう、どんなふうにやったのか、言ってみてごらん。
熊:だから、では最初の曲は「四季の歌」です、草葉の陰から楽しんで聴いてください、って。
隠:おいおい、草葉の陰から、ってのは「死んだ人が見守っている」という意味で使うんだ、生きてる人間に向かって言う奴があるか。
熊:ふーん、俺ぁ、植木鉢の向こうの人に言ったつもりだったんだが。
隠:日本には「忌み言葉」と言って、結婚式や葬式では避けたほうがいいとされる言葉があるぐらいだ、で、それだけかい。
熊:そのあと、「四季の歌」のテンポが遅かったんで、メンバーに「おい、四季を早めろ」と。
隠:それじゃまるで「死期を早めろ」に聞こえる、そこまで言や、ポカリもしょうがないな、MCというのは、辛口のジョークで済む場合もあれば、一言一句に気を配らなきゃいけない場合もある、今度から気を付けるんだな。
熊:やれやれ、わざわざそこまで気を使うのかい、あ、それで昔から言うんだな。
隠:なんて?
熊:「口はわざわざの元」。

そこで本日のひと言、
『モノ言えば 唇寒し MCの風』

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