『地獄耳の沙汰も金次第』2022年12月02日 10時10分10秒

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<新作落語・地獄耳>

世の中、ケチな人はどこにでもいるようでして、吝嗇(りんしょく)、ガリガリ亡者などと言いますな、六日知らず、というのもある、これは、日を数えるのに、一日、二日、三日、四日、五日と指を折って数えて、六日は指を開かなくちゃいけない、一旦握ったものは絶対放さない、というので六日知らず。

ジヤズライブハウスの隣りに住んでいる男ですが、地獄耳の持ち主で、毎夜、隣りの壁越しに聞こえてくるジャズの演奏を、耳を澄まして聴いて楽しんでいるという、
「ん、今日はアート・ブレーキーのコピーバンドか、なかなかいい音してるな、ん~、ラッパはまだ若いな」、なんてんで、奏者まで聴き分けるという。で、月末に男が訪ねて来まして、

「はい、どちら様、ああ、隣りのライブハウスのマネージャー、で、うちに何の用事で、え、請求書?私ゃ、お宅の店に入ったことはないが」
「いえ、明細書きがございますので」
「なになに、金5000円也、ライブ演奏の漏れ聴き代?なんだいこりゃ」
「いつも壁越しにうちの演奏をお聴きになっている、その分アンプの電気代が余計にかかるから、代金を頂いて来いとのことで」
「はー、そうですか、はいはい、わかりました、じゃ払いましょう、ちょっと待って・・・・・はい、この財布に500円玉が10枚入っている」
「ありがとうぞんじます」
「手を出すんじゃない、耳を出しな」
「は?」
「漏れ聴いた演奏だから、お前さんも、この財布から漏れ聞こえるお金の音を聞いて帰んな、ほれ、ジャラ、ジャラ、ジャラ、ジャラ」

そこで本日の一言、
『地獄耳の沙汰も金次第』