SF小説 『 脳は口ほどにモノを言う 』2020年11月20日 09時45分45秒


ある会社の役員会議が始まって2時間経った。途中、喉の渇き止め用のペットボトルのお茶が丸々残っている状況でコーヒーが出されたが、それにも手を付ける者はおらず、淡々と会議は進行した。

やがて、社長が席を立ち上がると、専務、常務、部長全員が立ち上がり一礼し、社長もそれに応え軽く頭を下げ、会議は閉会した。その2時間の会議中、一言の言葉も発されることはなかった。

「いやぁ、今日の会議は楽だったね」、「そ、みんなの意志の疎通が途切れなかったし」「社長も、今日は変な雑念を発して赤恥をかくこともなかったしな」「そうそう、あれは気を使っちゃうねぇ」。

「しかし、過去の会議のように、喋るってのも悪くないって思わない?」「いやいや、50年前のコロナの流行が発端となって、人間が獲得したすばらしい能力を使わない手はない、今さら”喋る”なんて不要だよ」「お茶もコーヒーも、形式儀礼だしね」

その部長たちは、いや、今や全人類はテレパシーで会話していた。人類の口は、火、道具、言葉、を使うヒトの三つの能力のうちの、喋る能力を捨て、ただ食べるだけの器官になっていた、「食事の時以外はマスクを外すことを禁ず」、という『地球コロナ法』が発布されて以来・・・。

そこで本日の一言、
SF小説 『 脳は口ほどにモノを言う 』

『 前門のコロナ 後門の御上(おかみ) 』2020年11月20日 10時05分05秒

先日、異業種交流のような会に出席した、GoTo~の解禁で。

入り口で検温を受け、手を消毒し、会場へ入る。小さめの宴会場に、6人掛けの丸テーブルが五つ、今回の出席者は30人ほど。

3ヶ月おきに開かれる会だが、コロナの影響で、9ヶ月ぶりの開催、参加者も半分ほど。主催者の苦労がしのばれる。

会食前に、透明のうちわが配られ、「会話はそれを口に当ててお願いします」。多分その会式場の常備品なのだろう。

2時間で会は終了したが、その間、そのうちわはほとんで使われることなく、テーブルに置かれたままで会話が交わされた。

第三波が急速に広がっている。それでも、GoToは継続、少ない人数で会食をと、コロナと経済を天秤にかける方向性は変わらないようだ。

自身、宴会に出席して感じたのは、場当たりの検温の疑問、人々の会食中の自制心の欠如、結句、コロナに対する警戒心の希薄さ。

会が終って数日経つ。もしコロナに罹患していても、発症するのはもう少し後。その間、自分を恨むか、GoTo政策を恨めしく思うか。

そこで本日の一言、
『 前門のコロナ 後門の御上(おかみ) 』