灼熱時代のSF小説・2題2020年08月20日 12時15分15秒

【 酷暑日の先は? 】
25度以上を夏日、30度以上を真夏日、35度以上を猛暑日、その上は規定はないが酷暑日とでも言おうか、ではその先は・・・

「次の方、そこへお座りください。えっと、今日は何の申し込みですか」
「あの~、日陰を歩く権利、の申し込みですが」
「ハイハイ、『日陰歩行権』ね、一人?お子様2人も込みで?申込書類はこれね、はい、しばらくお待ちください・・・えっと、手続き完了しました、この『日陰歩行権』の札を必ず首から下げて日陰を歩くように。ご存知でしょうが、これを使えるのは40度以上の酷暑日、それと国と提携した建物や電柱の日陰だけ。私有ビルなどの日陰は有料ですから注意して。そうそう、今日は50度以上の”残酷暑日”ですから、帰り道は気を付けて。・・・はい、次の方・・・」

【 ある日の海水浴 】
「パパ、どっか連れてって、ねえってば」
「分かったよ、じゃ海はどうだ」
「わー、海、いいな。じゃ、隣の部屋で水着に着替えて待ってるよ」
「さあ、このゴーグル付けて・・・どうだ、海は広いだろう」
「わーホントだ、それに水って冷たいんだね、あ、この水しょっぱい!」
「海ってそんなもんだよ。太陽の具合いはどうだ?」
「”暑い”って、こんなことなんだね、おもしろ~い!」
しばらく遊んでいると、ママが声をかけた。
「今日はなに?海水浴?もういいでしょ。海水代や太陽代、かかるし」
「わかったよママ。でも、せめて気分だけでも、と思ってな」
「そうね、あたしたちの頃は、本物の海で遊べたのにね」
「しょうがないよ、地球の平均気温が50度になって、海が干からびて、残った海も、高塩分濃度の熱水だし。なにしろ今は、空調のある建物からの外出は危険で、国から禁止されてる時代だからなぁ」
そう言うとパパは、疑似太陽光源機や、疑似海水製造機の設置された部屋で、ゴーグルを外した。もちろんゴーグルとは、水中用ゴーグルではなく、バーチャル体験用のゴーグル。