落語「続・熊さんステイホームする」2020年05月07日 10時00分00秒

落語「続・熊さんステイホームする」

大:「うちに泊まり込んで、もう三日になるんだがなぁ、熊さん」
熊:「いいねぇ、ホームステイ週間。そのうえ飯まで頂いちまって、は~有難てぇ」
大:「やれやれ、感じないな、とんだステイホーム週間だ」
熊:「ところで、大家さんとこの、床の間の化け物、ありゃなんです」
大:「化け物じゃない、掛け物。あれは唐時代の詩人の、杜甫の『春望』、五言律詩だ」
熊:「トホホの辛抱の、ご飯でっせ?ふーん、で、ナンて書いてあるんです」
大:「前半は、戦いで長安の都が荒れ果てた様子を詠んでいるな、一行目は、よく知られている、『国破れて山河在り』、というやつだ」
熊:「花とか鳥ってのがあるけど、あれは」
大:「本来は楽しい花も鳥も、今は涙が出て心が痛む、と書いてある」
熊:「へー、じゃ後半は」
大:「戦いが長く続き、やっと届く家族の手紙は宝物、頭髪も白く短くなり、冠を留めるかんざしもさせない、だな」
熊:「ふーん。なんだか、俺んちのコロナの状況に似てるな」
大:「熊さんちの?どこがだ」
熊:「コロナ騒動がもう三ヶ月続いてる、コロナ三月に連なり、だ」
大:「ほう、それから」
熊:「外出が出来ねえから、孫とのラインは万金にあたる」
大:「ふーん、それから」
熊:「坊主頭で白髪が増えて、帽子を被ってもポロッと落ちる」
大:「おやおや。で、前半はどうなんだ」
熊:「一行目が、俺んちの状況だ」
大:「一行目?『国破れて山河在り』、のどこがだ」
熊:「うちは、障子が、『紙破れて桟(さん)ばかり』」