バンドマン風落語「金明竹」2018年04月11日 10時19分26秒

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えー、落語の「与太郎噺」の一つに「金明竹」というのがありまして、道具屋の店番を頼まれた与太郎が、主人の留守中にやって来た仲買人の難しい用語を聞いて騒動を起こす、という噺ですが・・・。
バンドにもバンド用語というのがありまして、初めて聞くと何を言っているのか?と思うようなことがいくらもありますが。

「おいボーヤ(見習い)、今日のカンバンが打ち合わせに来たら呼びに来いって言ってたのに。 カンバン、来なかったのか」
「あ、バンマス、お帰りなさい。うん、誰も来なかったよ」
「そうか?おかしいな」
「誰も看板なんか持って来ないけど、綺麗な女の人が、『打ち合わせしたいんだけど~』って、覗きにきた。いないって言ったらまた来るって」
「バカ、それがカンバンだ。看板歌手だからカンバンってんだ。しゃあない、 俺、ヒーコー(珈琲)に行ってるから、また来たら呼びに来るんだぞ、いいか」

「ハハハ、バンマス走って行っちゃった。あ、誰か来た。あのー、どなたです?」
「わて、今日の歌手のマネージャーだす。途中で歌うジャズのメモリー(楽譜なしの即興) の曲のことやけど、バンマスいてはりまっか」
「バンマス?いま非行に走ってった」
「非行に走った?なんちゅーバンマスや。ま、ええわ、ほな、お伝え願えまっか」
「オツタさんが真っ赤?」
「(けったいな奴っちゃ)。
リハでは歌う曲のキー、ジー(G)ゆうてましたけど、キーが違ごてましたんで、シー(C)のキーでお願 いします。アタマ(冒頭部分)、ヤノピ(ピアノ)でボロンと音ください。ルバートでエー エービーエー(AABA=32小節の曲の形式の名称)のエーいったら、手ぇ振りまっさ かい、次のエーからインテンポ(一定の演奏速度)で。
ワンコーラス(曲一通り)いったら、タイコ(ドラム) のオカズ(短い間奏)で、次のワンコーラスはインスト(インストルメント=楽器演奏) でお願いします。ラッパ(トランペット)のメロ(メロディー)に、ボントロ(トロンボ ーン)とクラ(クラリネット)にからんでもろて、シーデキ(デキシーランドジャズ)風 に。プランジャー(ミュートの一種)使こてもろてもええで んな。サビ(曲の中の転換部分)から歌出まっさかい、そこからバンドさん、チータ (立奏)でやってもろて、ケツ(曲の終りの部分)はAトレン(テイク・ジ・Aトレイ ン=ジャズの曲名)風のエンディングで。と、こうお伝え願えまっか」
「ハハハ、面白いな。おい、100円やるから、もういっぺんやってみな」
「何ゆうてんのや、忙しいのに。まーいっぺんゆうさかい、あんじょう聞いてや。
歌う曲のキー、ジーゆうてましたけど、キーが違ごてましたんで、シーのキーでお願いします。 アタマ、ヤノピでボロンと音ください。ルバートでエーエービーエーのエー行ったら、手ぇ 振りまっさかい、次のエーからインテンポで。ワンコーラス行ったら、タイコのオカズで、 次のワンコーラスはインストでお願いします。ラッパのメロに、ボントロとク ラにからんでもろて、シーデキ風に。プランジャー使こてもええ。そのあと、サビから歌出まっさかい、そこからバンドさん、チータで やってもろて、ケツはAトレン風のエンディングで。と、こうお伝え願えまっか。ほな、よろしゅう!」

「あーあ、怒って行っちゃったよ。100円がいけなかったかな。200円っ て言やよかったな。あ、バンマス、お帰り」
「おい、今出て行ったの、ターウのジャーマネだろ。カンバンの代わりに打ち合わせに来 たんだな。何か言ってなかったか」
「えーっとね・・・あ、そうだ、爺さんが気が違ったんで、死んだ気でお願いします、っ て」
「爺さんが気が違った!?カンバンの爺さんかな、気の毒に。そりゃ、バンドも死んだ気でやるが、それから」
「で、頭がボロボロで、海老と海老が手を振って、インポテンツになった」
「頭がボロボロで海老が手を振る?幻覚を見るのかな、インポテンツって、下半身もボ ロボロってことか?で」
「んーと、たらこのおかずで、インスタントのわんこそばが食べたい」
「妙なモンを食べたがるんだな。それから」
「そんでもって、らっぱ飲みして、ボンクラがからんで、秀樹がブラジャーをして、チータ ーのお尻から錆が出た」
「おいおい、お前の言うことは変だな。もういい、俺が行って聞いてくる。まったく、お前み たいなのがメンバーだと知れたら、ギャラも取れんだろ!」
「あ、そう言ってた、『ええ取れん』」