バンドマン風「稽古屋」2017年04月17日 23時59分

熊:大家さん、いるかい。ちょっと相談があるんだが。
大、ほう、どんな相談だ。
熊:楽器をやったら彼女ができるって思って始めたのに、さっぱりなんだが。
大:おやおや、何かと思ったら、そんなことか。
熊:そんなこととはなんだ、じゃ、責任を持って彼女を紹介してもらおうか、おう。
大:おう、ってやつがあるか。楽器さえやったらカッコいい、ってもんじゃないぞ。
熊:ほかにもなんか要るのかい。
大:昔から言うな、「イチミエ、ニオトコ、サンカネ、シゲイ、ゴセイ、ロクオボコ、 シチゼリフ、ヤヂカラ、キュウキモ、トヒョウバン」とな。
熊:なんだそりゃ?なんかの怨みを晴らす呪文かい。
大:そうじゃない、この十のうち一つでもあれば、女性にもてるってことだ。
熊:もてる呪文かいへー、どんなんです?
大:まず、イチミエというのは、一番目は見栄、格好ということだ。熊さんの格好・・・は、ずい分腹が出てるな。
熊:腹式呼吸でやせないよう、以前より倍は食うようにしてる。
大:腹式呼吸でやせるほど練習してねえだろ。その腹じゃダメだな。
熊:じゃ二番目はなんです。
大:ニオトコ、つまり男前、だな。
熊:俺はどうかね。
大:どうかねって、顔を近づけるんじゃない。一般人なら気絶するぞ。ま、生まれ直すしかないな。
大:大きなお世話だ。じゃ、三番目は。
大:サンカネ、お金だ。熊さん、金は?
熊:バカにすんな、金なら無い!
大:早いな。四番目はシゲイ、つまり芸事だ。熊さん、かくし芸みたいなのはないかい。
熊:それなら大有りだ、「紫川のホタル踊り」は、バンドの宴会でも大評判だ。
大:ほう、いいタイトルだな。どんなんだ。
熊:裸になって体中に墨汁を塗る。それから頭に赤いタオルを巻いて、尻 に100円ショップの点滅電球をはさんで、宴会場を走り回るんだ。
大:なんだい、そりゃ。
熊:だから、体が黒い、頭が赤い、尻でライトが点滅して、ホタルみたいだろ。『紫川のホタル踊りの、始まり始まり~』ってんで、バンド仲間で大 評判。
大:おいおい、そんなことしてたら、彼女がいても逃げていくぞ。
熊:そうかい、自信があったんだがな。じゃ五番目は。
大:ゴセイ、精を出して働くと、彼女が惚れる。
熊:働く?年金もらってんのに働くなんざ、アホらしい。
大:え、熊さんはまだ年金を貰う歳じゃねえだろ。
熊:俺はもらわねえが、おふくろが貰ってるから、そのウワマエをはねる。
大:とんでもねえ奴だ。そんなんじゃダメだ。
熊:じゃ、次は。
大:ロクオボコ、六番目は純情、シチゼリフ、七番目は台詞まわし、ヤジカラ、八番目は力、どれもムリ だな。
熊:確かに。とうとうあと二つか、九番目はなんです。
大:キュウキモといって、肝、つまり度胸があると、もてる。
熊:肝なら任せとけ。このあいだのライブでもソロをたった一人で堂々と吹いた。
大:一人でやるからソロだ、で、どこでやったんだ。
熊:幼稚園。
大:幼稚園で堂々、ってのがあるか。
熊:それが、こないだまであがってた。
大:そんな肝っ玉じゃダメだ。
熊:そうかい、そうとう頑張ったんだが。とうとうラストの十番目は。
大:トヒョウバン、つまり評判がいいともてる。そういや、 先日の他のバンドとの交流演奏会で熊さん、他のバンドのいい楽器と自分の楽器と入れ替えて持って帰ったってえ話を聞いたが、そんなことしてねえな。
熊:入れ替えた?俺がそんなこと、するわけがねえ!。
大:そうだろうな。
熊:俺はね、カラッポのケースを持って行って、それにいい楽器を詰めて持って帰るんだ。それを「入れ替える」とは人聞きの悪い!
大:バカ野郎、すぐ戻してきな。それより、もてたかったらもっと稽古をしろ。一に稽古、ニに稽古、三四がなくて、五に稽古だ。
熊:へえへえ、じゃあな。
それから一ヶ月後・・・
熊:大家さん、いるかい。
大:熊さんか、久しぶりだな。おや、お連れさんがいるようだが、ひょっとして彼女かい。
熊:ああ、このあいだの大家さんの助言のおかげで、彼女ができた。
大:わたしの助言・・・っていうと?
熊:彼女の名前、「ケイコ」ってんだ。

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